My Prince ~運命の出逢いは、アイドルと…~
ただ触れるだけの優しいキス。
―――触れるだけの――?
その瞬間、閉じていた瞼の裏に、雄哉くんと水沢まりちゃんの深いキスシーンが、くっきりと浮かび上がった。
「…ん、やっ!……」
気が付けば、雄哉くんを突き押して、無理やり離れていた。
雄哉くんが目を丸くして、あたしを見る。
「あ…ごめ……」
――雄哉くんのその唇で、
水沢まりちゃんと―――
そう思うと、涙が一気に溢れ出て、慌てて雄哉くんから目を逸らした。
「えっ、ごめん。笑佳ちゃん、どしたの?」
違うよ…雄哉くんのせいじゃない。
嗚咽のせいで、思ったことが上手く声に出せない。
雄哉くんの、心配げで申し訳なさそうな表情。
違うの…。
…あのキスは、仕事なのに……