My Prince ~運命の出逢いは、アイドルと…~


―――「あ、家もうすぐなんで、この辺で…」


近所になってきたところで、あたしは口を開いた。


「いいの?」

「はい。ほんとにありがとうございました」


車から降りて、歩こうとしたとき、さっき殴られたお腹がまた痛んだ。


それを上野智也くんは、見逃さなかった。


「やっぱ送るよ。まだ痛いんでしょ。なんか遠慮してるんなら、歩きで。」

「え!?」


上野智也くんがグラサンをかけ始めた。


「や、ほんとにいいです!上野さん気づかれるとまずいし…それに」

「それに次の仕事遅れますよ?」


あたしの言葉に続いて、スタッフさんらしき千葉さんが口を挟んだ。


「あ、そっか…ごめんね。」


上野智也くんはあたしを見た。


「いえ!ほんと大丈夫なんで、こちらこそ…」

「…高瀬くんは?」


あたしが焦っていると、千葉さんが遠慮がちに呟いた。


「え?俺すか?」


かなり驚いた顔の高瀬くん。


「高瀬くんは、もう今日は終わりですし…?」

「えっ」


「うん。高瀬、送ってあげたら?」


上野智也くんまで、そう言った。

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