ボーダーライン


 直後、真紀が「あっ」と小さく声を漏らし、走った。

 慌てて追いかける。

「あたし、これでいい」

 指を差しているのは、茣蓙(ござ)だった。

 い草の匂いを爽やかに放っている。

 触れてみると、少し厚みはあるが、快適に眠れるほどの弾力はない。

「寝るには硬くねえか?」

「いいの。これなら敷きっぱなしでも邪魔にならないでしょ?」

「まあ、そうだけど」

「じゃ、決まり」

 そう言ってサッと茣蓙のひとつを抜き、さっさとレジへ向かってしまった。

 お値段、三千円。

 安いのか高いのか俺にはわからない。

 結局真紀は、この茣蓙に枕を置いて、タオルケットをかぶって寝ることになった。

 茣蓙を抱え、ゴキゲンな真紀。

「それ、持とうか?」

 俺がそう言うと、彼女が振り返った時に抱えている茣蓙が俺の腹にヒットした。

「あ、ごめん」

「こういうのは縦に持つんだよ!」

 茣蓙を奪い取り、それを縦に抱える。

 俺が持っていたほうがよっぱど安全だ。


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