ボーダーライン
ナイトタウンと題されたそのページは、自給三千円の世界。
そう、いわゆる「夜のお仕事」のページだった。
「お前、水商売やるの?」
「うん」
あまりにもあっさり答える真紀。
そのページにはキャバクラやスナックなどの飲み屋から、ちょっと……いや、かなりいかがわしい店の求人まで載っている。
「体を売る勇気はないから、普通にキャバクラだけど」
「勇気とかそういう問題じゃないだろ。親から敷金くらい出してもらえないの?」
俺たちは大学生。
俺だって毎月親からの仕送りで食ってるし、バイトはいわゆる小遣い稼ぎだ。
「うちは親には頼れないの」
求人誌を眺めたまま呟く。
その後姿がなんだか切なく見えた。
「地元の国立をやめて、自分のワガママで東京に出てきたし。下の弟妹もいるから、入学した時から援助は一切ないんだ」
生活費はバイトで、学費は奨学金で工面しているという。
別れた彼氏と一緒に暮らし始めるまでは、ずっとキャバクラで働いていたらしい。