ボーダーライン
こいつ、意外にも苦学生だったのか。
彼氏と別れて、住み家がなくなって。
それでも自力で何とかしようとするその姿勢は、尊敬に値する。
俺は典型的な親のすねかじり学生だ。
一人で暮らしていることに満足していた。
自分で起床し、自分で洗濯をする。
たまに自炊などしようものならもう何でもできるような気になっていた。
小さい人間だなぁ、俺。
真紀はちゃちゃっとハンドバッグから携帯を取り出し、電話をかけ始めた。
「あ、求人見て電話したんですけど」
早い。
行動が早い。
求人誌を広げて五分。
さっそく面接を取り付けたのだった。
「夕方面接に出かけるね。体験入店があるから、ちょっと遅くなるかも」
振り返った真紀は逞しかった。
「わ、わかりました」