ボーダーライン
「もしもし」
寝ぼけ声の俺に対して、彼女は以前と変わらずハイテンションだった。
「もしもーし。あれ? 寝てた?」
高校時代と変わらぬ声が俺の脳を揺さぶる。
俺は仕方なく体を起こし、声を絞り出した。
「うん、寝てた」
これみよがしにでかいあくびを一発かます。
きっと電話越しでも聞こえたはずだ。
「起こしてごめんね。実はさ、お願いがあるんだ」
「お願い?」
嫌な予感がした。
夏なのに少しだけ寒気がした。
きっと本能で感じ取っていたんだと思う。
「泊めて欲しいの」
「は? いつ?」
「今日から」
「から?」
「一ヶ月間」
俺はイマイチ意味を飲み込めず、携帯を持つ手を逆に変えて聞き直した。
「は?」
「だーかーら。一ヶ月、お世話になります!」