ボーダーライン
「ただいま~」
帰宅するなりごろんと茣蓙に寝転んだ真紀。
俺がトイレから戻ってきたらすでに寝息を立てていた。
ベッドは茣蓙の奥に位置しているから、細心の注意を払って真紀を跨ぎ、ベッドへ移動した。
ギシッと軋み、スプリングとともに俺の心臓が跳ねる。
慌てて真紀を見たがすっかり寝入っており、変わらずに寝息を立てている。
一安心。
エアコンのスイッチを入れ、タイマーをセット。
涼しい風が心地良い。
そこで思い出して、そっとベッドに置いていた真紀用のタオルケットをかけた。
頭はでっかく盛られたまま、化粧もそのまま、そして服も着たまま。
いくら俺でもそれが眠る体勢でないことはわかる。
メイクって、落とさないと肌に悪いんだよな?
それでも睡眠を優先したということは、よっぽど疲れていたのだろう。
もしこの状況が別の女だったら、生真面目な俺でもどうかしようという気を起こすのだろうか。
それとも相手が真紀でも……。
寝顔を眺めてみる。
目も口も半開きで、見事な間抜け面。
もしものことを想像した自分がおかしくなった。
そして再び彼女の寝顔を見ては、笑いを堪えながら明かりを消し、俺も横になった。