ボーダーライン
そして最後に俺の名前を打ち込む。
「良平の名前見たら、何て思うかな?」
「え?」
「もう次の男が出来たって勘違いして、悔しいとか思うかな?」
痛々しい気持ちが言葉から伝わってきた。
真紀とその元彼は一緒に生活していながら、なぜ別れたのだろうか。
「あいつ、普通だったなー。いつもの声のトーンで、荷物まとまったけど、どこに送ればいいの? だって」
俺は何も言えず、黙る。
「一年以上一緒に住んでたのに。あたし、もっとこいつの生活に溶け込んでると思ってた」
そのまま膝に顔を乗せ、一つため息を漏らす。
そして右手の親指で送信ボタンを押した。
<送信完了>
その表示を見届けて真紀は携帯を閉じた。
「じゃ、髪乾かしてくる」
立ち上がり脱衣所に設置されている洗面台へ向かう。
数秒後、ドライヤーの音が響き始めた。