ボーダーライン
真紀が来て一日。
わかったことは、真紀の心は穏やかではないこと。
高校時代を共に過ごしたと言っても、東京に来てからは数ヶ月に一度しか会わなかったし、俺たちの距離はそれなりに離れていた。
それでも俺を頼ってこの部屋に来たということは、きっとそれだけ切羽詰っているということだろう。
困っているなら力になろうと思うし、その結果が今の状態だ。
考え方が全く異なる俺たちだから、ある程度の距離をとっておかないと衝突するのは必至。
俺は真紀が彼氏とどんな別れ方をしたとか、どっちから振ったとか、深く干渉しようとは思わない。
お互いの生活を乱すようなことはしない。
そして俺が変な気を起こすことも、たぶんない。
高校の同級生というボーダーラインを越えることは、ないはずだ。
この距離感を保てば、俺たちの共同生活は成功する。
俺はマンガが詰まっている本棚に置いた封筒を見た。
あの封筒には真紀が家賃だと言って差し出した諭吉たちが納められている。
受け取る気はないが一応預かった七万円。
真紀は一体どんな気持ちで俺に電話をしたのだろうか。