ボーダーライン
午後五時、俺出勤。
「じゃー行ってくるから」
「はーい。いってらっしゃい」
俺のバイトは駅前の居酒屋だ。
賄も出るし、おかげで食には困らない。
俺も真紀も酒関係の仕事をやっているから、お互いに生活のリズムを壊すこともない。
その点は良かったと思う。
「お疲れっす~」
裏口から店へ入ると店長がニヤけながら俺に近づいてきた。
「迫戸」
「なんすか?」
「俺は見たぞ」
「だからなんすか?」
「女と買い物してるとこ」
小指を立てていやらしく笑う店長は、自称アゴ髭がチャームポイントの三十歳。
趣味は人の恋路をからかうことだ。
「とうとうお前にも彼女が出来たか~」
「できてませんよ」