ボーダーライン

「あ、荷物届いたんだ」

 やっとダンボールに気付いたようだ。

 視線が伝票に刺さっているのがわかる。

 数秒それを眺めてスッと立ち上がり、ダンボールには触れずにボストンバッグを探る。

 そして着替えを持って脱衣所へと行った。

 着替え、化粧、髪のセット。

 女とは、出かける準備に時間がかかるらしい。

 俺の準備が完了してから三十分。

 ようやく真紀の準備が完了した。

 俺がケツの穴の小さいヤツなのかもしれないが、待っている間、まだかまだかとイライラした。

 彼女が出来たらこうなるのかな。

 電車に揺られること十数分、池袋に到着。

 平日なのに人が多く、中でも若いやつらが多いのは今が夏休みだからだろう。

「人に酔いそう」

 顔をしかめている真紀。

「田舎もん」

「あんたもでしょ」

 こういう憎まれ口の言い合いは高校時代と変わらない。

 でもこうやって二人で街を歩くことはなかった。


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