ボーダーライン

 真紀は人の波を掻き分けるのが苦手なようだ。

「ちょっと待ってよ~」

 そのセリフ、ここに来て何度聞いたことか。

 他の店には目もくれず、でもやっとたどり着いた東急ハンズ。

 雑貨やゲームを見たり触ったりして楽しんだ。

 中でも真紀のお気に召したのは猫の肉球のおもちゃ。

 プニプニの肉球を押すと、猫の鳴き声がするというものだった。

 それを即お買い上げ。

 580円。

 ちょっと高くないか?

 そのフロアを少し移動すると、ガラスの棚にオシャレなオイルランプが展示されていた。

「これかわいい~」

 真紀が目を輝かせて指を差したのはブドウの形をしたガラスのランプ。

 これに色のついたオイルを注ぎ、着火して炎を楽しむらしい。

「確かに。なんかオシャレだな」

「買おうよ」

「え? うちに置くの?」

 余計な物は置きたくない派の俺は眉間に皺を寄せた。

「部屋が見つかったら持って帰るから」

 その説得に納得し、真紀の金でお買い上げ。


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