ボーダーライン

 ランプはオシャレなだけにそれなりの値段がした。

 コーチのバッグからグッチの長財布を取り出し、金を払う。

 買い物に満足したのかゴキゲンな真紀は、嬉しそうに店員から袋を受け取った。

「お前さ、今持ってるブランド物を全部売ったら部屋借りられるんじゃない?」

 俺が突っ込むと、真紀はあははと笑った。

「結構使い古してるもん。二束三文にしかならないよ」

 そう言って財布やバッグの汚れや痛み具合を説明する。

 もともといくらだったのか予想もつかないが、確かに使い古されていて売り物にはなりそうもなかった。

 ハンズを出てからは、しばらくフラフラと池袋の街を彷徨った。

 一休みしようと入ったドトールで、俺は久しぶりに真紀がタバコを吸うのを見た。

 そういえば、家で吸ったことないな。

「あ、これなら売れるかも」

 そう言ってヴィトンのシガレットケースを眺める。

 使い込んだ感はなく、キレイだ。

「時計とかも傷ついてるけど、いくらにかはなるのかな」

 自分の持ち物を鑑定し始めた。

 一体いくら出して買ったんだ。

 苦学生だというイメージが薄らいでいく。

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