ボーダーライン
駅に到着したところで腕が離れた。
今まで重なっていた部分に汗をかいていたようで、離れた瞬間にヒヤッと体温を奪われる感覚がした。
それが何とも物悲しい。
カップルがくっついて離れたがらないのは、この寂しさを避けるためなのかもしれない。
「ね、仕事上がったら映画でも観ようよ。夜更かししても大丈夫でしょ?」
電車の中で真紀が提案してきた。
「そうだな。でも朝帰りとかはナシだぞ」
「わかってるって。今日は十二時に上がらせてもらう」
「了解。じゃ、なんか借りとくわ」
その後はそれぞれの職場までの乗換えで別れた。
さて、何を見ようか。
アクション?
ジブリ?
まさかのラブロマンス?
いやいや、ないわ。
パッと顔を上げると特設お化け屋敷の車内広告が目に入った。
夏だし、ホラーだな。
俺は携帯でオススメホラー映画を検索。
目星をつけたところでバイト先に到着した。
今日のシフトに吉田さんは入っていない。
あっさりバイトが終わり、ビデオショップへ。
目星をつけておいたホラー映画を探すと、ホラーコーナーの人気ナンバー3の作品だった。
残り一枚。
ギリギリセーフ。
それを借りて店を出るとチャリに跨った瞬間に携帯が鳴りだす。