ボーダーライン
真紀が来て一週間。
仕事から帰ってきた真紀は、俺に封筒を見せ付けてきた。
「何?」
「初めての給料が出ました!」
ピースをして嬉しそうな顔をしている。
給料って手渡しなんだな。
「早いな。給料日、この時期なの?」
まだ八月の中旬も始まったばかり。
俺の給料日は毎月二十日、口座振込みだ。
「ううん。うちの店はね、給料日は毎週月曜日なの」
「は? 週に一回?」
「そう。日払いもできるけど、一気にもらったほうが嬉しいでしょ」
これまで謎に包まれていた夜のお仕事事情が、真紀の手によって少し紐解かれた。
給料日のあり方は店によって様々らしい。
法律上月に一回以上給料が出ればいいわけだし、小分けにされているだけだという。
それにしても気になるのは、まだ六日間しか働いてないのに若干封筒が厚く見えることだ。
いくらもらったか興味深いが、聞くのは下世話だろう。
そう思っていたら、真紀はテーブルに袋の中身を出した。
ガラス製のテーブルに、ジャラジャラと嫌な音を立てて小銭が転がる。
目を疑った。
諭吉、何人いる?