ボーダーライン

 女というのは苦学生でもリッチに生活していけるだけの稼ぎ口があるらしい。

 逞しいというか何というか。

 夜の商売のイメージが変わっていく。

 これまでは金にがめつい、いやらしい女たちが働く所だと思っていた。

 真紀のように生活のために頑張っている人だっているんだな。

 お水のお姉さまがた、大変失礼しました。

 明日は真紀のオゴリで何か美味しいものを食べに行こうということになった。

 男がおごってもらうなんてちょっとカッコ悪いが、お言葉に甘えよう。

 真紀に見栄を張ることもない。

 そして翌日、ちょっと高い焼肉屋へ行ったのだった。



 真紀が来て二週間経とうという金曜日。

 俺はバイトが休みで家でゲームをして過ごしていた。

 玄関の外からカツカツと走る音が聞こえたと思ったら、うちのチャイムが鳴った。

 ゲームを一時停止して鍵を開けてやると、ドアがすごい勢いで開き真紀が飛び込んできた。

 急いでドアを閉め、鍵をかけ、俺に背を向けたまま息を切らしている。

「真紀?」

 呼びかけるとゆっくりこちらを向いた。

 怯えたような苦しそうな表情。

 ふと目が合うと、ドアを背にしてズルズルその場にへたり込んだ。

 目は潤み、額には汗をかいている。


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