ボーダーライン
子犬と狼と安全な人
一度へし折ってしまった線でも、どうやら修復ができるようだ。
この間のエロいキスが夢であったかのように、普段通りの毎日が続いてゆく。
真紀は普通に毎日仕事に出かけ、俺も週に3~4日のバイトに出かける。
家にいれば真紀がいても落ち着いていられるし、バイト先で吉田さんを見ると癒された。
ファーストキスを済ませたけれど、今となってはなんてことはない。
チューなんてこんなもんか、と思ってしまう。
もう二十一歳だし、考えてみればチュー程度で盛り上がれる時代はとうに通り越している。
もったいないことをしたな。
変なポリシーなんて、もっと早くに捨てておけばよかったのかもしれない。
自分のポリシーがくだらないような気になって、揺らぎ始めた。
そんな時だ。
「私、彼氏と別れたんだ」
バイト先で、吉田さんがこんな話をしてきた。
「店長には言わないでね。からかわれちゃうから」
と、小さな声で。
思い続けた俺に、希望の光が射し始めた。