ボーダーライン
「迫戸君、今日は本当にありがとう」
「ううん。またいつでもどうぞ」
店を出てそんな最後の締めのような会話をしていた時。
「良平?」
後ろから低めの女の声がした。
振り返ると、相変わらず頭のデカくなっている真紀だった。
「早いな」
「うん、今日はヒマだった」
ピースをしている真紀が、俺の影に隠れていたであろう吉田さんに気付いた。
「こんばんは。真紀でーす」
「こ、こんばんは……吉田です」
満面の笑みの真紀に対して、少しビビッている吉田さん。
髪型もメイクも迫力満点。
更には身長も十センチほど高い。
まるで子犬と狼だ。
「二人で飲んでたんだ?」
「は、はい。もう帰りますけど」
そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。
危害をくわえたりしなければ、噛み付かれたりはしないはず。