ボーダーライン

 酒の力に負けて睡魔が襲ってきた。

 俺は紙をランプの下に戻しベッドに入る。

 窓から涼しい風が入り始めた。

 あと二日で九月になる。

 耳をすますと、微かに鈴虫の鳴き声が聞こえてきた。

 虫の子守唄で意識を手放した俺は、真紀が帰ってきたことにも全く気付かずに眠った。



「良平、起きて」

 体を揺すられ、目を覚ます。

 目を開け時計を見るともう昼前だった。

 よく寝たな。

 寝すぎて体が痛い。

 真紀はすでに出かける準備が整っているようだ。

「電機屋さん付き合って欲しいんだけど」

 急かされながら準備をして、二つ隣の駅にある大型家電量販店へ。

「何買うの?」

 まだ完全に目覚めていない俺は、あくびをしながら真紀についていく。

「冷蔵庫とかテレビとか、下見したいの。今日はまだ買わないけど」

 そうか。

 もうすぐ引っ越すんだもんな。

 家電も買い揃えないといけない。

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