ボーダーライン
店長は首を横に振ってアゴ髭に触れた。
「吉田さんとランデブー」
ランデブー?
言い方とその表情が気持ち悪いんですけど。
「は? 何言ってるんすか?」
「俺が気付いていないと思ったら大間違いだぞ」
「何をっすか?」
「吉田さんは男と別れたはずだ」
す、鋭いぞこの人。
ダテに恋愛事情をからかっているわけではないらしい。
「知りませんよ、そんなこと」
からかわれるのが嫌だと言っていた彼女のために、一応白を切っておく。
店長には言わないでって、言われたし。
「そんな時に、だ。お前は吉田さんをチャリの後ろに乗っけていた」
ああ、見たってそのことか。
「何してたのかなぁ~うふふ」
口に手を当てて、いやらしく笑う。
俺は冷たく言い放った。
「キモイっすよ、店長」
照れるなよ~、なんて言っているのを無視して、ロッカーを開けた。