ボーダーライン
エプロンとバンダナを装着して、タイムカードを押す。
今日は吉田さんは休みらしい。
「あ、迫戸。九月の休み、工面できたぞ」
店長の今度は真面目な言葉に、俺は首を傾けた。
「実家、帰るんだろ?」
すっかり忘れていた。
実家に帰るために、一週間の休みを申請していたんだった。
「ありがとうございます」
そのシフト表を受け取ると、休みが取れたのは九月の十日から十六日までの一週間。
真紀にも言っておかないと……。
ん?
ちょっと待てよ。
真紀がうちに来たのは、八月の十日過ぎ。
ということは、引越しは俺が実家に帰っている間に行われる可能性が高い。
家に帰ってそれを伝えると、真紀はあっさり答えた。
「いいよ。そんなに荷物もないんだし」
確かに、うちに置いてある荷物はボストンバッグとダンボール一箱だけ。
家電と家具は当然配送だ。
あえて俺が手伝わなくたってどうにでもなるし、真紀なら心配ないだろう。
俺はシフト通り、九月の十日発、十六日着の新幹線のチケットを予約した。