ボーダーライン
十分に地元での休暇を楽しみ、再び新幹線に乗って東京へ帰ってきた。
親に持たされた土産類で荷物は出発時の約二倍。
広いが人も多い東京駅で、その荷物を捨ててしまいたくなる。
何とか電車を乗り継いで、帰宅したのは夜の九時過ぎ。
部屋の鍵を開けて中に入ると、玄関にぽつりと合鍵が落ちていた。
テーブルとベッドの間に敷かれた茣蓙が目に入る。
しかし、ボストンバッグもダンボール箱も、ブドウのランプもない。
部屋が広く感じる。
ドサッと荷物を降ろしベッドへダイブした。
枕から、微かにシャンプーの香りがする。
俺がいない数日間、真紀がここに寝ていたのだろう。
今はもう、見下ろしても真紀がいない。
ベッドから手を伸ばすとしっとりした茣蓙に触れた。
静かな空間に耐えられず、テレビのスイッチを入れた。
疲れた体を叩き起こしてシャワーに入る。
脱衣所へ行くと、バスタオルは全て、きちんと畳んで置いてあった。