ボーダーライン
シャワーを出ても聞こえるのはテレビから流れる乾いた音だけ。
もう二年以上一人暮らしをしていたのに、今更寂しいと思う自分に気付く。
別れとは、こういう気持ちになるんだな。
勉強になった。
ベッドに腰掛けテレビに向かう。
でも面白くなくて消すとまた静寂が広がった。
タオルを干し、再びベッドへダイブ。
耳に入るのは自分が動いた時に出るガサガサ音だけ。
それすらも嫌で、勢いよく起き上がる。
ふと本棚に置いた封筒が目に入った。
真紀が最初に差し出した七万円だ。
「返さないと」
真紀に連絡をしようと携帯を手に取った時、マナーモードにしていたそれが震えだした。
<佐原 真紀>
画面にはそう表示されている。
俺は少しだけためらって通話ボタンを押した。
「もしもし」
「あ、良平?」
「うん」
「もうこっち帰ってきた?」
「うん」
「もう家にいる?」
「うん」
「今からそっち、行ってもいい?」
「……うん」