ボーダーライン

 電話はすぐに切れた。

 俺、うん以外喋っていない気がする。

 今から真紀が来るという。

 俺は諭吉たちの入った封筒をテーブルに置き、ベッドに寝転んだ。

 それから1分後。

 ピーンポーン

 呼び鈴が鳴った。

 え、もう来たの?

 驚きながらドアを開けると、それはやっぱり真紀だった。

 化粧もしていないし、いつも寝るときの格好だ。

 そして少し恥ずかしげに顔を伏せている。

「ごめんね、疲れてるのに」

「いや、いいよ」

「引っ越すときまともに挨拶できなかったから、ちょっと顔が見たくなって。あ、見たらすぐ帰るつもりだったの。だから……」

 体は自然に動いていた。

 無意識に、衝動的に。

 ドアが閉まる音がして我に帰ると、真紀は俺の腕の中にいた。

 腕の中で小さく、俺の胸に押し付けられていた。


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