ボーダーライン
「ごめん!」
慌てて腕を離すと、真紀も驚いた顔で呆然としていた。
「ま、入れよ……」
頷き、俺の後を追って部屋に入ってくる。
俺、何やってんだろう。
冷蔵庫から帰りに買った麦茶を取り出し、グラスに注いだ。
それをテーブルに置くと、真紀は一口だけ飲んでグラスを置いた。
俺も隣に座り、同じように一口飲んで置いた。
「あのさ……」
二人の声が重なる。
「いいよ、先に言って」
「俺だっていいよ」
一度譲り合って、口をつぐむ。
静寂に包まれるのが嫌で、俺は目の前にある封筒を手に取った。
そして、真紀に手渡す。
「なに?」
真紀は中身を確認すると俺につき返してきた。
「これ家賃じゃん」
「いらねーもん。持って帰れよ」
「やだ、ここに置いていく」
「じゃあ、引っ越し祝い」
「はぁ?」