ボーダーライン

 観念したのか、ため息をついて封筒をテーブルに置いた。

「じゃ、ありがたく頂いて、今度誰かと美味しい物食べる」

「そうしとけ」

 真紀が頷いて、部屋はまた静かになった。

 二人の息づかいと、自分の心臓の音しか聞こえない。

 ふと肩に何かが乗ったと思ったら、真紀の頭だった。

 顔を向ければ真紀もこちらを向いている。

 顔が、近い。

 もっと近づくのを止められない。

「ねえ、さっきのあれ、何?」

「聞くなよ。俺にもわからな……」

 最後まで言えなかったのは、近づきすぎて距離がなくなってしまったからだ。

 数秒そうして顔を離すと、真紀が小さな声で言った。

「やめないで」

 俺は返事の変わりに、もう一度口付けた。


< 79 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop