ボーダーライン

「お、俺がもし変な気を起こしたらどうするんだよ?」

 半ば興奮気味にそう聞くと、少しだけ色っぽい顔をして答えた。

「あたし今ちょうどフリーだし、良平ならいいよ」

 言いながら俺の首筋から顎までををすーっとなぞる。

 ボワッと鳥肌が立った。

「バカか!」

 慌てて彼女の手を払い、一歩離れた。

 やべぇ、今ので心臓がバクバク言ってる。

 未だかつてこいつを女だと思ったことはなかったのに。

 ほんの少しだけ色気づかれたらこれだ。

 どれだけ女に耐性がないんだよ、情けない。

「一ヶ月だけ。ううん、あたしがお金を貯めて、新しい部屋を借りるまででいいの」

 再び差し出される七人の諭吉。

 ネイルアートで飾られた女の手にビビる。

「お願い」

 滅多に見れない真紀の懇願する顔に、俺はやられた。

 かつての級友が困っているのを無下に突き放すわけにもいくまい。

「わかったよ……」

 こうして俺と真紀の同居生活が始まった。




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