ボーダーライン

 どうしてこんなことになっているのか、わからない。

 俺のポリシーは本気で好きな女以外とは付き合わないこと。

 人の女には手を出さないこと。

 そして……なんだっけ。

 俺の好きな人は吉田さんのはずだった。

 少なくとも真紀ではないはずだった。

 なのに今、真紀に触れずにはいられない。

 ここに真紀がいることが、真紀とこうして触れ合っていることが、幸せで幸せで仕方がない。

 ポリシーなんて、どうでもいい。

 真紀がいるなら、何でもいい――……。




 夢中になって求め合った後の、心地よいまどろみの中、素肌にタオルケットだけを巻き付けた真紀が、俺の髪を撫でながら問う。

「少しはあたしに、興味持ってくれた?」

「え?」

 この状況で、興味もへったくれもないだろう。

 むしろ真紀のことしか頭にないというのに。

「だって良平、何も聞かないから」

 真紀はそう言って俺の顔を覗きこんだ。

「前の彼と別れた理由とか、新居のこととか、何も聞いてこないよね」

 少しスネた様子で、俺の頬をつまむ。

 あまり触れない方がいいと思ってあえて聞かなかったのに、聞いてほしかったのか。

 女心はわからない。

「じゃあ、今聞くよ」


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