ボーダーライン
俺に触れていた真紀の手を掴み、チュッと軽くキスをして自分の指を絡ませる。
ところ構わず口付けたくなるほど真紀が可愛くて仕方がない。
「彼と別れたのはね、あたしが高校時代に好きだった人を忘れられなかったからなの」
「え? なにそれ。つーか誰? なぁ、誰?」
絡めた指につい力が入るが、真紀に反対の手で強烈なデコピンをキメられる。
鋭い痛みが脳天に突き刺さり、おかげ様で真紀が高校時代に好きだった人が誰か、「気付い」た。
「それで、今はどこに住んでんの?」
額をさすりながら訪ねると、真紀が俺のベッドを垂直に指差した。
「え? ここ?」
「ちがうよ、103」
「変わった地名だな」
「バーカ。ここの103号室だよ」
「えぇっ?」
ふと思い出す。
そういえば、少し前に誰かが引越ししてたっけ。
その時に空いた部屋を真紀が借りたというわけか。
どうりで来るのが早かったはずだ。
寝る格好だったのも納得がいく。