キミのとなり。

千鶴と智明がつき合い出し、そのことを美佳さん始め親達の知る所になった頃から、自然と千鶴を迎えに行くことが少なくなった。


ま、最初は行きにくいであろう千鶴を迎えに行ったことから始まった習慣だし。


2人がつき合い始めた今、それも必要なくなったってことで。



どういう経路かわからないけど、忙しいはずのうちの親父も知っていて。


“智明に千鶴取られたんだってな”と、笑いながら背中をバシバシ叩かれた。


……ほっとけよ。





リビングに繋がるドアを開けると、コーヒーのいい香りが俺を迎えてくれた。


「おはよう」

「おはよう、修ちゃん」


いつも通りの笑顔で迎えてくれる美佳さん。


──直人さんは今日もいないみたいだ。



「千鶴は?」

「それが、まだなのよ」


姿が見えないから聞いてみたら、美佳さんは少し心配そうな顔をして答えた。


「智明は?」

「まだ起きてこないの。ホント、困ったわねぇ」

「起こしてくるよ」


朝食の準備に忙しそうな美佳さんの背中に声をかけて、今通ったばかりの廊下に出た。
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