キミのとなり。
今回は本当にノックもせずにドアを開ける。


ベッドには、こちらの背を向けて小さく肩を上下させた智明の姿。


……本当にまだ寝てるし。



「おい、起きろよ」


ベッドの縁に座って肩を揺らしてみるけど……起きる気配がまったくない。


「智明。起きろって」


寝返りを打ったかと思ったら、枕に顔を埋めて動きが止まった。


「……千鶴が」


ふと思いついて、耳元で千鶴の名前を口にした途端。


頭だけを持ち上げて、まだ開けきらない目で俺を見た。


「……あ?」


何はともあれ、目は覚めたみたいだ。


千鶴の威力って絶大……。


「飯、出来てるぞ」

「……づるは?」

「千鶴? まだだよ」


もぞもぞと起き上がったのを確認して、俺は智明の部屋を出た。




「……まだ来てない?」


智明を起こしてリビングに戻ると、いつもはいるはずの人物の席がまだ空いていた。


「そうなの。具合でも悪いのかしら?」

「……智明起きたし、行かせれば?」

「そうね。じゃ、修ちゃんお先にどうぞ」


そう言って、こんがり焼けたトーストとコーヒーが目の前に置かれた。


「いただきます」

コーヒーの香りを吸い込みながら食べ始めた頃。
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