キミのとなり。
「だから、勝手にしろって。選ぶのはあいつだろ」


智明は窓の外に視線を向けたまま、ぼそっと言った。



選ぶのは千鶴、か。





「……もし」

「え?」


景色から俺に視線を移した智明は、いつになく真剣な表情をしていた。


「千鶴がお前を選んでも、また俺に振り向かせるよ」


きっぱりと言い切った智明は──男の俺から見ても格好いいと思った。




「……大事にし過ぎなんだよ」

「あ?」


「不安がってたぞ。……じゃあな」

「ちょっ、おまっ……!」


焦る智明を置いて、俺は電車を降りた。


走り去る電車に自分でもわかるくらい極上の笑顔を向けて手を振ると、向けられた智明は最高に不機嫌な顔をしていた。





その自信があるなら、さっさと千鶴の全部を受け止めろよ。


それで──俺に諦めさせてくれ。


……って、結果はもう……。



「決まってんだったな……」


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