キミのとなり。
「見つけたから勝手に使った。あと、タオルも」

「ありが、とう……」


シートを剥がし、熱が下がったか確認するために、首元に手を滑り込ませた。



「えっ……」

すると、急に体を固くして、掛け布団を口元まで引っ張り上げた。


……うん、正常な反応。


熱もだいぶ下がったみたいだし。


「水、持ってくる。飯、食えそう?」

「……多分」


「じゃ、温め直してくるから」

そう言って頬にキスでもしようと顔を近づけたら……。



「だ……だめっ」

頭まですっぽり掛け布団を被ってしまった。


「……なんでだよ」

「風邪、うつっちゃう……」


鼻から上だけを出し、小さな声でそう言った。



……やばい。

この顔は反則だ。


「ここでうつるかよ」

俺は精一杯の虚勢で自分の頬をトントンと指さした。


「ほっ……ぺた?」

「なーに期待してんの?」


意地悪く笑うと、

「み、水っ!」

と言ってまた、すっぽり布団を被ってしまった。


「はいはい。……あ、ついでに着替えとけよ」


元気もちょっとは回復したみたいだし、何より正常な反応をする千鶴に安心して部屋を出た。




──あの千鶴は俺の心臓に、っていうか、俺の理性に良くない……。


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