キミのとなり。
「……よしっ!」
両頬をパンッと叩いて、私は出かける準備に取り掛かった。
応急手当はしたものの、完全には引かなかったまぶたの腫れを隠すため、ちょっとだけ濃い目にメイクをして修ちゃんの家に向かった。
……って言ってもすぐ隣だけど。
「意外と早かったじゃん」
ドアを開けて迎えてくれた修ちゃんは、すっかり出かける準備が出来ていた。
「意外とってどういう意味!?」
「女の子は時間かかるだろ?」
「……女の子って、誰と比べてんのよ?」
「やけにつっかかるね〜」
笑いながらさらっと流された。
「今日メイク濃いね」
そう言って、左手でそっと頬に触れた。
「……っ、そう、かな?」
どうせバレてるってわかってても、つい虚勢を張ってしまう。
「ま、いいけど。……コーヒーでも飲んでく? あっ、昼飯食いがてら、もう出ようか?」
「うん!」
食事も出来る駅前のカフェで修ちゃんと向かい合って座る。
「どこ行くの?」
注文したクラブサンドを食べながら聞いてみた。
「千鶴はどこ行きたい?」
「……修ちゃんの気分転換でしょ?」
朝、家に来た時からなんとなくそうじゃないかな、って思ってたんだけど。
やっぱり私のためなんだね。
「買い物? 映画? 遊園地……は時間的にどうかな……」
買い物は”女の子”はみんな好きだし、私が映画好きなの知ってるし、騒いで気分が晴れるのは遊園地。
……ホント、修ちゃんには敵わない。
「その中だったら、修ちゃんはどれ?」
でも、今日は私も意地になってみる。
一番気分が晴れるのは、やっぱり遊園地かな……。
「あんまり時間ないけど、俺久しぶりだし、遊園地にしようか?」
「……しょうがないからつき合ってあげる」