キミのとなり。
酸素を吸うのがやっと。


言葉がうまく出てこない。


「なんで……こんなことっ……」


なんでキスなんかしたのよ。


どういうつもりで……。


無意識にシャツの胸元を強く握った。


トモの呼吸も、ちょっとだけ乱れていた。


「彼女……いるくせにっ」


さっきの涙とは違う涙が溢れて来た。


「……違うし」

「え……」

「彼女じゃない」


トモはまっすぐな目で私を見ていた。


「……嘘」


そんなの信じられない。


一緒にいるところだって見たのに。


トモはちょっとだけ私との距離を詰めると、私の頬にそっと手を当てた。


ビクっと肩が上がってしまう。


それを見て、ちょっとだけ手を引いたけど、また頬に触れた。


「……頼まれて、彼氏役してただけ」

「……え」


トモの目は真剣だった。


「男に付きまとわれて迷惑してるから、彼氏のフリしてくれって頼まれた。……黙ってる約束だったけど」


そう言って、目尻に残った涙を親指で拭った。


「…………」


思ってもいなかった展開で、私は言葉も出ない。


「千鶴」
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