キミのとなり。
静かな空間に鳴り響く着信音。


──いつの間にか、雷は遠ざかっていた。


鳴っているのは、私の。


床に放り投げたままのカバンから携帯を探し出す。


ディスプレイを見ると、表示されていたのは“修ちゃん”。


無意識にトモを見てしまう。


「何? 出れば?」


トモはそう言って立ち上がると、ベランダに向かって歩き出した。



ピッ


「もしもし……」

『あ、千鶴? 今どこ?』

「あ、家……」


なんとなく、トモの後ろ姿に視線を向けた。


『雷大丈夫だった?』

「あ、うん、大丈夫」


トモは電話の相手が修ちゃんだって、わかってるのかも。


『智明……』

「えっ!?」


いきなりトモの名前を出されて、声がちょっと高くなった。


『そこにいるの?』

「あ……」


思わず黙ってしまった。


でも黙ったってことは、認めたのと同じこと。


修ちゃんにはすぐバレてしまう。


『やっぱり、敵わないのかな』


修ちゃんはそう言って小さく笑った。
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