キミのとなり。
その瞬間、ビリッとした鋭い痛みに、



「……いっったーい!」

私は大きな声を上げていた。



「……大袈裟だな」

つかんだ跡が残るんじゃないかと思うくらい強く肩をつかまれているはずのトモは至って涼しい声。


「大体なぁ、いい歳して何してんだよ……」

「いい歳って……。しょうがないじゃん……」


うっすら涙を浮かべて目を開けると、トモは血に染まった脱脂綿を捨てるところだった。


消毒液を私の膝にかけながら、新しい脱脂綿でそれを拭き取る。


そんな作業を繰り返し、ようやく脱脂綿に血が付かなくなった。



「大体、どうやったらこんな怪我するんだよ?」

「それ、は……」


恨めしい気持ちで机の上に置かれたプリントに目をやった。



先生に頼まれた資料を両手で抱えて歩いていた時、派手にコケちゃったんだよね。

両手が塞がってて反応が遅れて、それで……。


……ホント、情けない。



「……後は、自分でやるよ?」

グラウンドから、部活が始まったらしい声が聞こえてくる。


トモも部活あるだろうし……。


「お前、どうせ適当にやるだろ?傷残ったらどーすんだよ」

「ちゃんとやるって……」

「ダメだ」
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