私の夫は王になれない俺様
深いため息をつくと、私はドレスを片付けるメイドに目をやった

「次は何色のドレスを着ればいいの?」

「お次は、赤いドレスでございます」

何で赤なのよ

どうしてイングランド軍の旗の色のドレスを着なくちゃなのよ!

ここはスコットランドよ

青いドレスが良かったわ

それとも…ロバート様のご意思?

お前はイングランド軍と同じようなものだ…とか言いたいの?

「そうか…私を妻にして言いなりする
赤い色はイングランドの象徴よ
新妻をイングランドに見立てて、『いつか俺はイングランドを言いなりにする』とでも言いたいのね」

メイドたちが顔を合わせると、首を傾げた

あ…そうね

つい母語を使っていて、何を言っているのかわからなかったのね

スコットランドは大きく二つに分けられる

ローランドとハイランド

私が生まれ育ってきたのはハイランド地方

そこではケルト民族の血を引く人間が住みゲール語が母語となる

私が嫁いだのはローランド地方で、英語に同系統のスコットランド語が母語となる

私はどちらも話せる

他に英語とフランス、スペイン語を習ってきた

話し慣れているのはやはり母語であるゲール語

気をつけて話さないといけないのね

今日からは、私はローランドの人間になったのだから

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