私の夫は王になれない俺様
「死にたいのか?」

俺の質問に、ジェイミーが目を見開くと、ゆっくりと首を横に振った

「死にたくないのなら、死に急ぐ発言はやめるんだな
あんたの手紙で、イザベラがどう思おうが俺には口出しする権利はない
人の心は、他人が勝手に踏み込めるものじゃないだろ
イザベラが、俺の元に留まろうと…あんたの元へ駈け出そうと
それはイザベラ自身の心の訴えだ
俺がとやかく言えることじゃない
…だが、二人が駆け落ちをする結果となった場合…俺はキャリック伯として、処分を下す
一人の男として、対応できる範囲なら目をつぶりたいが、な
俺も王の領土を預かる人間の一人だから、な
できれば、最悪の結果は避けたいものだ」

俺は前を向くと、再び足を動かし始めた

背後では「ちっ」とジェイミーが舌を打つ音が聞こえた

「いいのですか?」

イサンが小声で、俺に聞いてきた

「何が?」

「ジェイミーをあのままにしておいて」

「あいにく俺は、剣をこの城に預けているからな
殺すにも殺せない」

「もし…もしも、イザベラ様が…」

「言っただろ
イザベラがどう思おうと、どう行動しようと、それはイザベラの心の問題だ
俺が手まわしをして、生きる道を狭めたくない」

…て、すでに狭めた俺が言う発言ではないが

俺は「ふん」と自嘲の笑みを浮かべた

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