三日月の雫
一番、踏み入れてほしくなかった話。
相手が柚羽だからこそ、聞いてほしくなかった話。
「昔はいたね」
僕は柚羽から目をそらして言う。
「今は?」
「……今は…」
かんなは、昔の彼女であって、今の彼女じゃない。
そういう関係が続いていたけれど、僕たちは、ずいぶんと前に別れている。
「……いない、ねぇ」
そう彼女の存在を否定するけれど。
「いいんですか?こんな時間にウチに来て」
柚羽がどこでどう聞きつけたのかなんて分からない。