三日月の雫
『啓介…さ…』
フラついた足取りで啓介さんに駆け寄ると同時に、パトカーが数台、サイレンを鳴らしてやってくる。
『永輝、逃げろ。後のことはおまえに任せたぞ』
『啓介さん、オレも一緒に……』
『オレの後を継ぐのはおまえしかいねぇ。かんなのことも頼んだぞ』
啓介さんはそう言って、僕を突き飛ばした。
僕はユウヤを抱え、意識がまだしっかりしている数人の後輩と一緒に必死で逃げた。
『お兄ちゃん、捕まったのね』
妹思いの啓介さんが言った言葉。
――かんなを頼む……。