三日月の雫

「おまえに好きな女がいること」



啓介さんの言葉に、遼太郎が驚きの声をあげる。



「永輝くん、好きな女いるの?」



遼太郎は僕とかんなのことを全て知っていた。

だけど、柚羽のことはまだ話していなかった。


どんな女なのか、どうやって知り合ったのか。

興味津々な顔をしつつも、深刻そうな様子を悟った遼太郎はそれ以上何も聞かず、ただ黙っていた。



「……柚羽…、彼女のことは言わないでください」

「……だったら、完全にかんなと終わるようにしよう。オレも立ち会う」



力強い、一言だった。

最初からそうすれば良かったなと啓介さんは言ったけれど。

すぐに、ここまでかんなが執着するとは思わなかったと続けて言った。

< 110 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop