三日月の雫
僕は流されるようにして、ベッドへと行った。


いつもはキスで始まる。

けれど僕は、かんなに一度たりともキスをしなかった。



『ちょっ……』



強引に柚羽にキスしたあの夜の記憶が蘇る。

柚羽と重ねたこの唇を、他の誰とも重ねたくはなかった。



「……永ちゃん。大好きよ」



耳元で囁くかんなの声。


さっきまでかんなが読んでいた雑誌が僕の目に映る。

表紙が真っ二つに破れている。


……なんで、破れてんだ?


かんなを抱きながらも、僕はそんなどうでもいいことを考えていた。

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