三日月の雫

「はは、永輝さんらしいや」



そう笑うと、ユウヤは着古した特攻服の中からタバコを取り出し火を点けた。

僕と啓介さんが着ていた特攻服を、ユウヤは今もまだ身につけている。

すっかり色あせていて、綻びた裾には不器用な縫い目が目立っていた。



「ユウヤ、おまえいいかげん新しいの買えよ」



僕が失笑しながら言うと、ユウヤは大きく首を横に振る。



「ダメっすよ!これじゃなきゃ!」

「……オレが恥ずかしいんだよ。その服、もう何年前のだよ?」

「えーっと……」



すぐに答えられないほど、時間が経っていた。



「啓介さんも同じこと言うと思うけど?」

「そうっすかねぇ……。そんなに言うんなら……」

< 122 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop