三日月の雫

……まさか…。


逃げるようにして帰ったかんなのことが瞬時に浮かぶ。



暗証番号……。

そういえば、まだ柚羽と出会う前。

メールを打つのが苦手な僕はかんなに代打を頼んで。

その時にロック解除するのに番号を教えたような…。


まさか……――。

いや、だけど……。


柚羽の番号は『沢井』で登録してあるし、他の女はかんなも知っているヤツばかりだ。

僕と柚羽のことを、かんなに知られるはずなんて、ない。


自分を安心させるために、何度もそう言い聞かせたのに。

それなのに僕の心臓は、速く鼓動するのを決して止めようとしなかった。

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