三日月の雫
第5章―それぞれの愛―
・キャンディ・
柚羽のアパートに着くと、彼女はいつも僕を笑顔で迎えた。
でも、なぜか今日は、どことなく浮かない顔をしていた。
「どうした?ボーッとして…」
僕が様子を伺うと、柚羽は何かを決心したような顔で真っ直ぐに僕を見た。
「かんなさん……」
ぽつりとその名を口にする柚羽。
やっぱり気にせずにはいられなかったのだと、改めて思う。
「……彼女じゃないのにそばにいてあげないといけないなんて…」
すべてを知らない柚羽にとって……。
きっと、僕とかんなのことは理解し難い関係だ。
話すべきなのか……。
柚羽にとっては重過ぎる、僕とかんなのこと。