三日月の雫
酔っているのかいないのか全く分からない啓介さんも僕に同調する。
「永輝くん!」
遼太郎が片手に持っていた缶ビールをドンとテーブルに叩きつける。
完全に据わった目で僕をじっと見た後に、ポツリと呟く。
「……あたりめ、食いたいれす」
「はあ!?」
飛びまくる話に、その場にいたみんなが素っ頓狂な声を上げた。
遼太郎の目の前にはたくさんのつまみがある。
だけど、遼太郎が一番好物のあたりめだけがなかった。
なかった、と言うよりも、遼太郎が全部食べてしまったのだ。
「……しょうがねぇなぁ」
僕はそう言うと、車のキーとサイフを取り出し、玄関へと向かった。