三日月の雫
「ごめん、もう帰って」
抱きしめた僕の腕を振り払い、柚羽はまた、僕の顔から目をそらした。
「……柚羽…」
柚羽をもう一度、抱きしめようとしたその時…。
僕のすぐ後ろにあったドアがけたたましく叩かれる。
あまりにも突然の大きな音に、僕たちの身体は同時にビクッと震えた。
「……誰?」
そう聞く僕を前に、柚羽はハッとしたような顔でドアノブに手を伸ばした。
柚羽の手がドアノブに触れる前に、ドアが勢いよく開く。
「やっぱり!!」
聞き覚えのある声に、血の気が引く。
ゆっくり振り返ると、そこには怒りに満ちた表情のかんなが立っていた。