三日月の雫
僕をどん底に叩き落とした出来事は、それだけでは終わらなかった。
翌日、もうすぐ仕事が終わるという頃に啓介さんから電話があった。
用件も言わず、ただ、仕事が終わったら真っ直ぐ家に来いとのことだった。
仕事を終えて帰る頃にはすっかり夜になっていた。
靄のかかった夜空に浮かぶ小さな三日月。
霞んで見えるその三日月は、まるで涙を溜めているように見えた。
もうすぐ春が来ようとしているのに、そんな気配すら感じられない。
……春が来たら、なにか変わるのかな。
寒い夜空の下。
僕は白い息を吐きながら車に乗り込んだ。
啓介さんの家に着くと、僕はそのまま啓介さんの部屋へと通された。
かんなもいるはずなのに、声ひとつしなかった。
「……かんなは…」
部屋に入って腰を下ろすなり、僕は啓介さんに聞く。