三日月の雫
「啓介さん。もう柚羽には会いません」



これ以上、柚羽を傷つけたくなかった。


誰よりも大切な君を。

誰よりも、そばにいたいと思った君を。



「おまえたちが我慢することじゃ…」

「――いえ、いいんです。……でも、最後に一度だけ、柚羽と会わせてください」



啓介さんは、何も言わず頷いた。

それほどまでに、僕の固い決心は滲み出ていたのだろう。


啓介さんでさえも黙らせてしまった、僕の一大決心。


それなのに。

僕の目からは温かい何かが、何度も頬を伝って滑り落ちていった。



帰る前に、僕は眠っているかんなの部屋に入った。

昨日の夜から僕が来るまでの丸1日。

かんながどんな様子だったのか、部屋を見れば一目瞭然だった。

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